妊婦とカフェイン

カフェインは、コーヒー、紅茶、ココア、コーラなどの飲料に含まれたり、頭痛薬、風邪薬などに含まれたり、日常生活でポピュラーな薬剤です。
適度なコーヒー、紅茶などの摂取はストレスを和らげ、妊娠にとって有害どころかむしろ有効です。
しかし、カフェインは催奇形因子と特定されているわけではありませんが、中枢興奮薬であるために、母親の過剰なカフェイン摂取は胎児にとって安全であるという保証はありません。
『カフェインとは?』
カフェインはキサンチンのメチル誘導体であり、以下の構造式です。
大脳皮質や延髄を興奮させ中枢機能や循環機能の亢進を起こします。カフェインはコーヒー、茶(紅茶、日本茶など)、ココア、コーラなど嗜好品として最も用いられる中枢興奮薬です。
また、頭痛薬や風邪薬に配合され、医薬品としても用いられます。
『カフェインの薬理作用』
1、中枢神経系
大脳皮質および延髄中枢の興奮を起こします。常用量で覚醒、不穏、精神緊張を生じ、知覚および運動機能が高められます。
眠気や疲労を除去するとともに運動機能を高めます。
2、骨格筋
疲労感の減退、活動性増大が起こるほか、骨格筋に直接作用して筋肉の収縮を増強する。
3、心筋・平滑筋
心筋に直接作用し、心筋興奮作用、すなわち収縮増加、拍出量増加をきたします。
平滑筋に関しては末梢血管拡張や気管支筋弛緩作用がみられます。
4、利尿作用
腎臓の血管をを拡張することによって、血流量が増加し、尿の生成が増加します。
5、胃酸分泌亢進
胃酸分泌を促進し、胃潰瘍の発生を促すことがあります。
『カフェインの副作用』
カフェインを過剰に投与されると、副作用として、不眠、不穏、精神興奮、感覚障害、骨格筋緊張、振戦、頻脈、呼吸促進がみられます。
極端に大量投与されると痙攣で死亡します。
コーヒー、紅茶などを極端に過剰に摂取するとカフェインの副作用が認められますが、死亡することは一般的ではありません。
カフェインに強い依存性はありませんが、軽度の習慣性が認められます。カフェイン中毒と呼ばれている症状は上記の副作用を意味しています。
『胎児とカフェイン』
カフェインの構造式は上記に示していますが、分子量が小さいために容易に胎盤を通過し、胎児に移行します。
そのために母親と胎児の血液中のカフェインの濃度は同じになります。
その結果、母親が過剰にカフェインを摂取すると胎児も過剰にカフェインを摂取することになります。
ところが、胎児のカフェインを排泄する能力は母親と比較して未熟であるために、カフェインを排泄することが出来ずに胎児の体内に蓄積されることになります。
従って、毎日連続して大量のコーヒー、紅茶を飲み続けると胎児の体内にカフェインが蓄積される可能性があります。
胎児に過剰のカフェインが蓄積されると、生まれてきた赤ちゃんに上記の副作用が認められることがあります。
具体的にはいらいらや落ち着きがないといった症状がでることがあります。
『カフェインの安全許容限界』
コーヒー、紅茶などの過剰摂取による胎児のカフェインの過剰摂取は決して好ましいことではありません。
そのためにはコーヒー、紅茶などの摂取量の明確な基準(安全許容限界)があれば好都合ですが、そのような基準は設定されていません。
このような基準が設定されていないのはアルコールなどの場合も同様です。
しかし、安全許容限界が設定されていないと言っても、常識範囲内のコーヒー、紅茶は全く問題ありません。
常識範囲内とは食後のコーヒーなどを意味し、1日に数杯ならば全く問題ありません。飲み過ぎに注意さえすれば良い問題です。
『コーヒー、紅茶の利点』
コーヒー、紅茶などの嗜好品は、その香りだけでも、心を和らげ、ほっとさせる作用があります。
このようなストレスを和らげる作用があるために、妊娠したからといっても、コーヒー、紅茶などをやめる必要はありません。
妊娠経過が良好であっても、妊娠自体がストレスの原因になります。ゆったりとした妊娠生活のためにコーヒー、紅茶を楽しんで下さい。

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