妊婦とアルコール

慢性的な過剰のアルコールの摂取は身体的、精神的健康に悪影響を及ぼすのは明白です。

妊婦の飲酒により、アルコールは胎盤を容易に通過するために、胎児は母体のアルコールにそのままさらされます。

さらに胎児にはアルコールの処理能力がないために、胎児に悪影響を及ぼします。時には胎児の知的障害などの異常を伴う胎児アルコール症候群あるいは胎児アルコール影響障害などをきたします。

このような異常はアルコールの飲用を控えれば、完全に回避出来るために、妊娠中はアルコールを断つことが原則です。


『アルコールの分解と胎児』

成人においては、体内に摂取されたアルコールは肝臓でアセトアルデヒドに酸化され、さらには酢酸に分解され、最終的には二酸化炭素と水に分解されます。

妊婦がアルコールを摂取すると妊婦自身はこのようなアルコール分解作用を有していますが、胎児には肝臓が未熟なために、アルコール分解作用はありません。

従って、胎児はアルコールにさらされるのみで、危険を回避する手段は全くありません。まさしく胎児にとってアルコールは催奇形因子として作用します。


『胎児アルコール症候群(fetal alcohol syndrome;FAS)』

慢性アルコール依存症の妊婦から中枢神経系の異常などを伴う障害児が生まれることがあり、胎児アルコール症候群(fetal alcohol syndrome;FAS)と呼ばれています。

以下にその診断基準を示します。FASと診断されるためには以下の全てが満たされなければなりません。

*胎児アルコール症候群(fetal alcohol syndrome;FAS)の診断基準*

1 出生前あるいは出生後の発育障害

2 中枢神経系の異常:神経学的な異常、精神発達遅滞、知的な障害

3 次の三つのうち少なくても二つを満たす特異的な顔貌
  ・小頭症
  ・小眼球症あるいは短い眼裂
  ・未発達な人中、うすい上口唇および上顎低形成

胎児アルコール症候群の異常パターンは次の通りです。

小頭症、特異的な顔貌(眼裂短小、内角贅皮、上顎低形成、短鼻、薄い上唇)、手掌の皺の異常、関節の異常、先天性心疾患などです。

『胎児アルコール影響障害(fetal alcohol effect;FAE) 』

上記のような3項目が満たされずに胎児アルコール症候群と診断されなくても、その一部が満たされている場合を胎児アルコール影響障害(fetal alcohol effect;FAE)と言います。

妊婦のアルコール摂取は胎児に悪影響を及ぼしていると考えられています。

母親のアルコールの乱用が精神発達遅滞の原因の最たるものであると考えられています。

飲酒とともに栄養不足を伴う場合には行動および学習障害をもつ子供を生じる時もあります。


『アルコールの摂取量の安全域』

アルコールは催奇形因子ですが、ごく少量ならば問題はありません。

大量飲酒であればあるほど危険であることは確かですが、どの程度から危険であるかははっきりしてはいません。

アルコール量の安全許容限界の設定はなされていません。

少量ならば問題ないことが多いですが、安全許容限界が不明なために、少量であっても控えるのが原則と考えるべきです。

『アルコール摂取妊娠時期と胎児アルコール症候群 』

器官形成期である妊娠初期に慢性的にアルコールを摂取すると先天的な形態異常の原因になります。

また妊娠中期以降に慢性的にアルコールを摂取すると胎児の成長障害を起こしやすくなります。

従って、妊娠のどの時期であっても胎児アルコール症候群を起こし得ることになります。

従って、妊娠の全ての時期にわたって、アルコールを控えるべきということになります。

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